『精神の現象学』の朗読

 『純粋理性批判』よりもむしろ講義のような『精神の現象学』を朗読するほうが私の肌にあう。金子武蔵訳は巻末にここぞとばかりに丁寧な注釈書が書かれてあるので馬鹿でも注釈書を朗読すれば理解の助けになる。
 『精神の現象学』はひとつの精神発達の物語なので朗読した後ドラマなどをみると「この演出はこういう意味をもっているんだな」とか「ここでカメラワークが切り替わったのには演出家の意図があるんだな」とかいろいろな発見がある。

 ヘーゲルの生い立ちはヘーゲルの学ぶだちであったローゼングランツが『ヘーゲル伝』のなかで詳細に書いている。ひとの文章を書きうつすことが趣味でコーヒーが好き。新聞をよむのが日課だった。眉をひそめた肖像画から「ともだちがすくないだろうな」とおもいきやフィヒテヤコービなどおおくのお友達に恵まれた。おそらく誠実な性格であったのであろう。