教育哲学ショートショート 「心理のなかに」

 シマダ氏はゲーム理論フロイト理論を結合することに成功した。ヤマト氏はシマダ氏の友人でゲーム理論の本に書き込みをして独学で音楽理論を構築していった。なぜならば、シマダ氏は精神が不安定なところがあったためだ。
 しかし、シマダ氏は美しい恋愛小説を書くことができた。
「私の小説は太宰治氏と村上春樹氏の小説を朗読したものを再構成した雑文にすぎない。燃やしてしまうなら今のうちだ」
と言ってはばからなかった。ヤマト氏は文章の書きかたに関する本をよみながら小説を書いていった。ヤマト氏はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に書き込みをして理論の体系化をはかっていった。
 ヤマト氏の家系は女系家族で本が沢山あった。そのために独学で哲学を学びながら小説を書くようになった。シマダ氏の知性と理性を活かしながらヤマト氏は感性を活かすようになったそのうちふたりは結婚して家を建てることになった。ヤマト氏の奥様ヨネコさんと言って、シマダ氏の奥様はタカヨさんと言った。
 ヨネコさんはチェスが上手く、またコーヒーをのむことが好きであった。また、ピアノが上手で特にバッハの『平均律クラヴィーア』が上手だった。そして経済学の本も何冊か執筆しており、学術的でありながらも読みやすい文章で書かれていた。ヨネコさんはまたタカヨさんといっしょに本をお茶を飲みことが好きだった。ヨネコさんの読む本はキリスト教系の本やコバルト文庫でときには洋書を読むこともあった。
 シマダ氏は小説を書いていたが、ものぐさなため雑誌に原稿を受け渡すことをしなかった。そもそもシマダ氏はその勇気がなかった。なぜならば、だれも読まない文章を活字にしても仕方がない、と思っていたためである。
 しかし、ヤマト氏は文芸誌に受け渡すことをすすめた。
「せっかくの才能を無駄にすることは善くないよ」
「原稿はそのほとんどがゴミ箱に捨てててしまったので意味が無い。本を買うお金は家族にその所有権があるので私にどうする権利はなにもないんだ。好き放題に本ばかり買っていったら、家族の経済が成り立たなくなる。おい、そうだろ」
「そりゃ、そうだけど学ぶことは大切だ」
「いや、家族の方が大切だ」
「そんなことはない」
「わかってない」
「わかってないのはお前のほうだ」
「いや、お前は僕の話を聴いていない。いつもそうだ。おなじことばかり言っているのに何もお前は言うことを聴かないじゃないか」
「それはお前がユダヤ教でおれがローマカトリックなためだ」
「いや、いやそんなことは関係のないことだ」
するとヨネコさんがなかなおりをしてくれてふたりの口喧嘩はやっと終わりをつげた。