『まわる神話構想ノート』

私はある<物語り>を読むとき、深層意識に響かせるようにして読むようにしている。個人の無意識が普遍的無意識や元型の無意識とどのような関係性をもっているかという哲学的問いがそこにはある。あるAという作品がBという作品に深い影響を受けていたならば、Aをかいたαさんの深層意識のなかにBを書いたβさんの心象がまがりなりにも映し出されていたということになる。
 深層意識を考察するときにはスワン・ダイブをするように水のなかにもぐり、書くことによってゆっくりと地上へと顔を出し身体全体をだしていく。
 そのことは創作上最もスリリングであり、また最も小説を書く上ではなくてはならない行為なのだが、難しい行為でもある。