教育哲学ショートショート 「ふしぎな小説」

 マイナク氏は理性について考えていた。マイナク氏の左のポケットには拳銃があった。
「どうしよう」
とつぶやいて、マイナク氏は酒場でジン・トニックを飲むことにした。これからのことをなにもきめていないのだ。不安が強くマイナク氏をむしばんだ。右手をポケットに入れてマイナク氏は本と紙にむかって小説を書き出しはじめた。
 紙は原稿用紙とプリンターの用紙だった。となりに座っていた男が、
「君は小説家かい」
とたづねた。
「いいえ、学校で英語の教師をやっているんです。もうすぐ東京へいくんです。小説家だったらいいんですけど、なれないんですよ」
「じつはね私は小説家なんだ」
「そうなんですか、こればかりはみためで判断することができませんものね」
 マイナク氏は長編小説を書きたかったのでその男に長編小説の書きかたをおそわるまで対話した。
「夢をつむぎだすようにして小説を書いてごらん」
その男の結論はシンプルなものだった。
 マイナク氏は夢をみた。その夢をもとに小説をかいていった。長い長い小説だった。マイナク氏が自覚したことは
「長編小説よりもむしろ短編小説をかくこのほうが難しい」
ということだった。
 マイナク氏はその小説をある男によんでもらったところおなじ内容の小説を書いたことがあると、おどろいていた。